Tiffany.J『孤独人間解放』

死ぬまでに友達できたらいいな…

感謝を拒絶する孤独人間

「今日は母の日だから母親に何かしなくては…」

そう思える人は一瞬でも人生の中で幸福感を得たことがあるのだと思う

瞬間的にでも生まれてよかったと一点の曇りもなく感じた経験があったのではないか?

 

物心ついた時から両親は私に

繰り返し「感謝しなさい」と言った

私の命を助けてくれた医師に

輸血をしてくれた叔母に

そして、言葉には出さないが私という病児を産み育てた両親に

 

私はその”感謝”という言葉にピンとこなかった

何かをしてもらって「ありがとう」と言いましょうというのはわかる

でも感謝の強要に私の心は拒絶感を覚えた

私が決めるべき内側まで干渉されている気分だった

 

同様に、誰かが決めたきまり、いいこと、悪いこと

あらゆる身近な道理や常識といったものに対して

「そういうものなんだ」とすんなりとは受け入れられない子どもだった

そういう意味で私は両親や家族、今まで知り合った人達全員にとって

”偉そうな人間”だろうと思う

年配が決めたことだろうと昔からの風習だろうと疑問は引き下げないし

納得するまで考える質だ

さぞ小賢しい、面倒くさい、扱いづらい、そんな人間だと思われていることだろう

 

それは両親の無言の”感謝の強要”への拒否感から端を発しているように思う

そこから、正論というより

マジョリティや何も考えずしてマジョリティに従う人々への不信感や怒りへと発展していった

 

母親は如何に私の看病が大変だったか、

私を育てていることで毎日どれだけ気を遣っているか、

他の親子のようにいかない愚痴、

自分が母親の中でも一番苦労している類であること、

私のように重篤な赤ちゃんを産んでしまってショックで自殺しないかと心配されるほどだったことを語り聞かせた

生まれたことを申し訳なく思うほどに

その上、とても過干渉な人で何でも自分で把握し自分がやらないと気に入らない

過干渉が故に私の行動しか見えていない

私の内部を見て信用しようとはしない

いつになっても私の内部がわからないことに焦って

何をし出すのか、何をしていないのかとチェックする

母親は職を持っていたし、父親は仕事でほとんど家に居なかったから

仕事、祖父母の対応、家事、育児、そして看病を一人でこなしていた

田舎で運転免許もなく、苦労しただろうし、毎日疲れたことだろう

 

しかし、母親が

「こんな病児を持ってつらい」と思いながら育児をした期間

私はずっと死にそうな体を引き摺って生きてきた

私の人生は丸ごと病人であり、痛みと苦しみは生涯続く

私は産んで欲しいと頼んでもいないし

ましてや病気で生まれたくはなかった

病児の母親の気持ちはわからないが

病児自身の気持ちは母親とてわかりはしない

なんだかんだ言っても母親は健康で自分の好きな仕事をして人生が楽しそうだし

そもそも別の人間なのだからお互いわからないに決まっている

 

来る日も来る日も検査、また検査

何度も何度も全身麻酔をかけられる

起きたらどうしようもない怠さと吐き気

気が付けば胸も腹も背中も大きな手術痕

成長期にT字帯を穿かされる尿管カテーテルを入れられる

医師、看護師、検査技師…

相手が男性であろうと年齢がどうであろうと胸を晒さなければならない

点滴が入らなくなればパンツを脱がされ股関節にだって針を刺される

おかげで両手首、両足首、両股関節は傷だらけ

 

一人で泣きながら過ごす病室

チューブ、点滴、医療器具に繋がれベッドから動けない日々

他の子ども達が食べる物も遊びもレジャーもない

学校の友達がテレビを観ながら笑っている間

私に見える景色はカーテンに囲まれた白い天井

クリスマスは病院のサンタさんが配ってくれたケーキを

同部屋の子と泣きながら食べた

隣のベッドから聞こえる呻き声

夜中、近くの病室に医師が駆け込む音

その後に聞こえる家族の悲鳴のような泣き声

すすり泣く声と共にまた一人、また一人と地下へ運ばれていく

次は自分の番かもしれない恐怖

 

「感謝しなさい」と言われる度に

「お前に何がわかる!!」

そう叫び出しそうになるのをずっと堪えて生きていた

 

私は明らかに周囲の人間より生きることに苦労しているのに

感謝まで強要されなければいけないのか?

感謝をねだられればねだられるほど

自分達がつくった子どもの面倒を見るのは当然でしょう?

なぜ、心の中まで入ってくるの?

そうやって感謝というものへの拒絶は強くなっていった

 

言いたい気持ちをぐっと抑えて

何も考えていないフリをしてきた

親が悲しむから、怒られるから、

嫌われたら世話を放棄されるかもしれないから

私が生きていること自体が迷惑だと身に染みているから

わざと強がっておちゃらけて誤魔化して

自分の中で処理してきた

 

だから両親の前で私は最も性格が悪くなる

本当の純粋な私を両親には見せたくはない

 

祖父母が亡くなった時

こんな関係でなければちゃんと哀しめたのにと思った

両親が私より早く逝くならきっとまた同じことを思うだろう

 

それが虚構の自分を構築した理由だ

こんな悍ましく末恐ろしい正体と

いつ崩壊するかわからない本心を

自分自身で抑え、守りながら生きるしかなかった

 

 

 

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脳が慢性疲労だ

悪魔に睡眠を支配されてから始まったもう一つの人生

それは現実の人生では味わうことができない心の奥に閉じ込められた私の理想郷

現実と並行して進行している

 

アパートの和室でベビーベッドに寝かされいるあの場面からスタートし

今では現実と同い年のもう一人の私がもう一つの人生を送っている

設定のディティールまで現実と遜色がない

もう一つの人生にはもう一つの人生の過去があり人間関係がある

 

理想郷で生きる私は

大勢の人達と共に暮らしている

血の繋がりや年齢や生まれた土地やバックグラウンドもバラバラな人の集まりで

何にも縛られず出入りも自由だ

 

比率も権利も男女が平等な世界

お金やセックスから解放された世界

ただそこにいたい人がいる世界

そこで毎回数多の出来事を体験する

現実ではできないようなしたいことをして言いたいことを言っているのかもしれない

心の奥の無意識下で望んでいる姿なのかもしれない

 

一見すると、毎日何時間も理想郷にいるとは幸せじゃないかと思われるかもしれないが

私自身はそうは感じられない

 

二重の人生を生きると困難な方、私で言うと現実の人生が無意味で空虚になる

どうしても二つを比較し、もっと良くなるはずだという幻影が拭えない

人生がずっと霧がかっていている

人生の全部が待ちの時間だ

ひたすらに耐えながら何かを待っている

何を待っているのか

並行する現実と理想郷が交わる瞬間だ

全く違う二つの人生が溶け合い

現実の延長線上に自然な成り行きで、しかも早急に実現する時を待っている

だから起きている時間は静かな空間でとにかく自分の思考に触れていたい

不可能だからこそ考え整えていたい

現実の人生を生きるための精神的物理的材料を集めたい

理想郷を見せられれば見せられるほど自分をしっかり繋ぎ止めねばならない

 

私の脳は24時間フル稼働だ

入眠という臨死の恐怖を超えると

明らかなまがい物の人生が何食わぬ顔で連綿と繰り広げられ

それに騙されたフリをして俯瞰から見ながら待ち

一方で必死に体に「起きろ!」と指令を出し

汗と涙と動悸と共に目を開ければ

架空の未来に心を奪われないように思考を巡らせる

 

脳が慢性疲労

やめたくともやめられない

 

 

 

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睡眠が悪魔に支配された日 ー悪夢のマトリョーシカー

あれは小学校1年生の夏休みだった

私にとって睡眠は悪魔の時間と化した

 

私は生まれ変わりたいのではなく

この苦難を味わう自分の意識を保ったまま別の体を手に入れたいのだと自覚した

 

完璧な体に交換したい

この自分の意識を保ったまま永遠の時を過ごしたい

死にたくないとは似て非なるもので

体よりも意識を失いたくないという非常に強力な衝動が生まれた

 

 

真夏の陽射しがギラギラと照りつけたある日

私は母親に連れられ遠戚の葬儀に参列した

私の記憶は告別式のある瞬間から鮮明にそして強烈に脳に刻まれている

それまでは遠くから見ていた故人が眠る棺を

数人の男性が祭壇の前に運び蓋が開かれた

私は母親に言われるがまま棺に近づいた

他の参列者も皆、棺に近寄ってきた

故人の配偶者は憔悴しきっていて家族に支えられながら歩み寄り

故人の顔を見ると涙が溢れ出し、ハンカチで目頭を交互に押さえた

司会者の声掛けで次々に花を手に取っていく

私も白い菊の花を1本手渡された

故人の身近な人達から順に棺の中に花を手向けていく

すすり泣く声が増え始めた

やがて母と私の順番が来て棺に向かって数歩前に出る

 

一切の赤みを失った若い男性が横たわっている姿が目に飛び込んできた

 

人生で初めて遺体を実際に見た瞬間だった

その亡骸は顔や手指にいたるまで黄色人種の肌の色を隠すほど紫斑に覆われていた

故人は白血病に罹り闘病の末に亡くなった方だった

まるで脳を撃ち抜かれたかのようだった

私の中の時が止まった

あまりの衝撃と恐怖に身震いがした

私は何故かそれを必死に隠さなければならないと思った

周囲にバレてはいけないと思った

なんともないフリをして私も遺体の上にそっと白菊を置いた

白菊の花は誇らしく形を保ち、菊と葉は深い緑が堂々と真っ直ぐに伸びている

それなのに白菊達も目の前の男性も内側の流れはもう止まってしまっているのだ

暑さとは明らかに違う汗が背中を流れ落ちた

参列者全員が花を納めると再び先ほどの男性達が棺に近づき蓋を閉めた

そして更なる衝撃がこの身を襲った

棺に釘を打ち始めたのだ

耳の奥、頭に響くくらいの大きな音に聞こえた

もう何も考えられなくなった

配偶者のすすり泣きが号泣へと変わった

それをきっかけに周囲の泣き声も音量を増した

棺は持ち上げられ霊柩車へと運び込まれていった

葬儀には私の他にも同年代の子ども達が数人参列していて

それまでキャッキャと遊んでいたのに

それ以降は空気が一変した

その中の一人が「変なものを見ちゃった」と呟いた

そんな言い方をしてはいけないと思ったが

その子の謂わんとすることは十分に理解できた

 

普段から口数の多い母親は帰りのバスの中でもなんだかんだと言っていたが

内容は一切入ってこなかった

大きな香典返しを抱えながら帰宅しリビングに入ると

二人とも腰が抜けたように床に座り込んだ

「疲れた」の一言しかこの日の母親の声は覚えていない

テレビをつけると当時流行していたキョンシーが放送されていた

それまでキョンシーを見るのを避けていた私だったが

チャンネルを替える気力も起きず放心していた

キョンシーも怖いけどその日見た光景はもっと怖かった

 

その日からだった

私は眠りにつくのがとても難しくなった

病弱でしっかりとした睡眠時間は欠かせないし体も疲れているのに

布団に入ると目が冴えて眠れない

眠りに入っても悪夢に酷くうなされる

睡眠が悪魔に支配された

6歳のあの夜から42歳の今もそれは変わらない

 

布団に入ると自分が遺体になった気がする

その後に来る入眠は我という意識が消滅する瞬間なのだと錯覚する

死後をリアルに想像してみる

無論、それが合っているかなんてわからないのだが

目を閉じずとも脳に映る景色が消える

そこには永遠の無が広がる

意識は消えたはずなのに

計り知れない恐怖と不安が何tもの塊となって胸を圧し潰す

私は我を失い絶叫してしまう

それを何度も何度も数時間にわたって繰り返し、やっと眠りにつく

 

入眠すると

今度は脳がもう一つの人生を映し出す

夢の中に人生が在る

あるはずだった、完璧な体なら手に入れるはずだった可能性という悪夢

 

アパートの和室の中心に置かれたベビーベッド

そこに生まれたばかりの私は寝かされている

ベッドの両脇には若い夫婦がにこやかに愛おしそうに私を見ている

本当の私の両親だと知っている

同時に、そんなことはあり得ないし、これは夢だし、

現実の私は1歳まで病院を出られなかったし、実家は初めから一軒家だとも思っている

 

直ぐに私は悪夢から覚めようとする

疲れた体はそう簡単に目覚めてはくれない

しかし脳は覚醒していて体に指令を送る

「目を開けろ!早く!急げ!!」

体は全く起きようとしない

脳は焦る

そのうちに起きたような錯覚が始まる

部屋が見える

起き上がっていつものような生活を送っている

そのうちに「あ、私はまだ起きていないんだ」と気づく

夢のまた夢、悪夢のマトリョーシカ

それを何周も繰り返し

「もういい加減起きてくれ!!」

そう脳が懇願すると

晴れた昼間に私は立っていて、目の前には一人のお祖母さんが立っている

二人しかいない空間

全ての人類が滅んでしまった後みたいにこの世には私とお祖母さんの二人しかいない

お祖母さんは私の未来の姿だ

お祖母さんは一人きりで旅立っていく……

 

大量の汗と涙、そして絶叫と共に視界が開ける

 

 

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孤独人間の化けの皮

私は常に化けの皮を被って生きてきた

言葉として嘘をついているのとはちょっと違うかもしれない

態度として虚勢を張っていると言った方が近いと思う

 

文字通り”裸を見られた”ら全世界から笑われる気がしていたから

相手にもされず一生見下される気がしていたから

 

「本当は凄いのに体が悪いせいでできないんだ」と

ムキになって全身で訴えていた

 

元気なふりをしたり

頭がいいふりをしたり

性格が良いふりをしたり

といったごく単純なものから

 

学校カーストヒエラルキーの優位性を表したり

他人とは違う才能があるとアピールしたり

小さな特技や功績を誇大に鼻にかけたり

自分の周りの人間を自慢げに語ったり

といった拗らせまくりなものまで様々

 

今見えているのは本当の姿ではない

こんなこともできる、こんな能力がある、こんな栄光も持っていると

訳アリの闇をチラつかせて人を惹きつけようとしていた

 

いつ化けの皮が剝がされるのか

実はみんなには”裸”が見えているのではないか

常に怯え人間不信に陥りながら……

 

なんて嫌味で滑稽で卑怯でバカバカしい人間なんだろうと

自分でも心の底から自分を軽蔑し嫌悪していたのに

自分が存在することへの罪悪感から

なんとか自分の存在価値や利用価値の幻想を見せようと必死だった

 

自己肯定感なんて1ミリも育たなかった

自分全否定、自分アンチ……

 

家族を含め自分以外の人間に見せる強くて賢くて堂々とした自分と

情けなくてみっともなくて一人で藻搔き苦しんでいる自分

二重人格のような対極を恒常的に行き来して使い分けて生きていた

 

でもとにかく

「私と一緒にいればこんなにいいことがあるよ」

「私と仲良くしたらこんなに誇らしいよ」って虚構を構築していないと

 

一人では生きていけない体は

他人に大事にしてもらえなければ

夢を叶える前に一瞬で命が消えてしまうから

 

 

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虚構人生の始まり

生物として最も大事な栄養を摂り入れるという機能を持たされず生まれた私

生きるために生涯消えることのない傷を体中に負った

 

「命を助けてもらったのだから感謝して生きろ」

「同じ時期にNICUにいた子の中には生きられなかった子もいたのだ」

「助けてもらったたくさんの人にありがたく思いなさい」

そうしつこく言われて育った

 

「どのような体でも構わないから産んで欲しい」と

私がお願いしたわけではないのに……

両親の本能とエゴで生まれ生かされた命ではないのか?

こんな体、今すぐにでも放棄したい

 

幼児期にこんなことを考えている人間はどれだけいるのだろう

 

 

生物としての機能的にも

女性としての外見的にも

誰より最低最悪な体

それでも生きていくしかない

 

最低最悪な人間に生まれたのだから

ここから最高な人間になってやりたい

 

人々に憧れ、羨ましがられるような

この世の全ての幸福を味わってからでないと人生終わって堪るか!

死にたくない!死なない!

 

幼い幼い心が決意した

 

でもこの体ではダメだ

最高な体が欲しい

 

健康な体、美しい美貌、モデルのようなスタイル

これだけ持てば確実に人生が変わることは幼心でもわかっていた

それに金銭的な余裕と学歴があればさらに良いと

 

しかし実際は食事すら命懸けで虚弱で体力がなく

全く思うように体が動いてくれない

それどころか次々に病にかかって入退院の繰り返し

 

 

私は最高な体を構築していくことさえできない

 

最高な体を得られないのなら……そう思わせればいい

 

自分も他人にも「この人は凄いのだ」と

 

 

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孤独人間の敗因

人間は自分達が思うほど進化していないのかもしれない

確かに技術は目覚ましい進歩を遂げてきた

しかし、精神はある程度脳が進化してからそれほど進歩していない

そう思い知ることが増えた

 

「自分磨き」「自分探し」

「自分とは?」「幸せとは?」

「生とは?」「死とは?」

「愛される方法」「モテる方法」「儲かる方法」

 

答えのない問いに人生の大半を費やし

曖昧な情報に飛びついてしまう

 

物心ついた時から私は「自分」という存在と闘ってきた

それはある意味死闘といえるほど過酷な道のりだった

 

「何のために私は生まれたのか?」

「人間だけが進化した意味とは?」

「宇宙は、地球は、私は、なぜ誕生したのか?」

「なぜ生まれ、なぜ死ぬのか?」

「死んだらどうなるのか?」

 

気が付いた時には既にそんなことばかり考える子どもだった

人生の全てが疑問符だらけで目の前の現実に身が入らなかった

 

森羅万象の、生命の、宇宙の

基礎基本を何も知らずに生きて行けるはずがない

ゲームのルールも操作方法も何一つ知らず

命を失う失敗は一度たりとも許されない無理無謀な闘いを強いられている

 

せめてルールや操作方法くらいは教えておいて欲しい

原理や目的を知らなければ納得できない

 

宇宙というものが、生命というものが先に存在していて

人間は自分の体について何も把握していないのは

何と言うか、順番が逆な気がした

 

どんなに頑張ろうといつか死んでしまうなんて

全てが無駄な気がした

 

何一つわからないまま時間だけが過ぎ死期が迫ってくる

 

幼い頃からそんなことで頭がいっぱいだなんて

なんて無駄な時間を過ごしているんだ

それは無意味な闘いだ

今を楽しんだ方が良い

今できることを精一杯した方が有益だ

そんなことは私自身が一番わかっているしそうしたい

そんなことばかり考えているせいで底知れない恐怖感と不安感に精神を冒されたのだから

でもどうしても切り替えられず疑問を解消しなくては先に進めないのだ

 

先天性疾患を持って生まれ

生きる希望がほぼなかった

感染症や大病を繰り返し

常に私の体は生死の境を彷徨ってきた

いつ堕ちるかわからない崖っぷちを命綱もなく独りで歩いている感覚だ

実の親にすらこの苦しさと恐ろしさはわからないだろう

 

この体から逃れたかった

この体を捨てたかった

 

自分は食事すら命がけなのに

他の子ども達は皆元気に何も考えず走り回っている

 

自分は体中傷だらけなのに

親の体には傷がない

プールで裸にされたら他の子ども達にも傷一つない

大人も子どもも皆一様に私の体を見て悍ましい表情を浮かべる

 

生まれ変わりたいのではなく

この苦難を味わった自分の意識を保ったまま別の体を手に入れたかった

 

不平等なこの世界が

その元凶であるこの体が

どうしても赦せなかった

 

別人になりたいと望んだことが

私の人生を根底から狂わせた

 

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孤独人間没落の理由

私は今

実家の2階に住んでいる

中学生の息子と共に

 

42歳、無職、シングルマザー

精神障害者、病弱、就労不能

 

毎日処方薬を飲み

何とか一日一日を生きている

 

一人では何もできない

連絡をくれる友達すらいない

 

生活は両親の支援と障害年金で賄っているが

ギリギリの暮らし

 

誰がどう見ても理想的な大人ではない

残念な大人だ

 

それは私自身が一番思っていること

 

 

 

中学校3年間は生徒会に所属

部活動では道大会出場

高校は進学校

国立大学に現役合格

卒業後小学校教員として10年間勤務

結婚し出産

 

一方でこれも私の事実、過去の事実

 

 

現在の事実と過去の事実

どちらが本来の私に相応しいかと言えば

現在の事実だろう

 

 

私は北海道の内陸部

田畑が広がる田舎で生まれ育った

いや死に損なったまま生き永らえた

 

母親が丸二日かけて産んだ私の体は

臍の緒を切った途端

死へのカウントダウンが始まった

 

遅かれ早かれ人間皆同じなのだが

私のカウントダウンは超高速で刻んでいた

食道が完全に閉鎖されていた為だ

 

そのままでは食べ物どころか

水すら胃まで届かない

 

 

42年前のこの田舎の病院には

この先天性食道閉鎖症の新生児を手術し

その後も生存させた事例はなかった

 

しかし

当時の小児科医の一人が果敢にも執刀した

 

母親のお腹から出て24時間も経過していない新生児の右胸から背中までの半周を切り開き

右肋骨をこじ開け

閉鎖した部分を切り取り

食道を縫い繋ぎ

再び右肋骨を元に戻し

皮膚を縫った

 

そして

食道が機能するまでの間

栄養を摂取できるよう

胃に穴を開けチューブを挿入

そのチューブからミルクを注入した

 

さらに

両手首、両足首にも穴を開け

4ヶ所から24時間点滴で薬剤、水分、栄養、輸血を入れた

 

私が生まれついて初めてされたことが

授乳でも抱っこでもなく

全身麻酔をかけられ体を切り刻まれることであり

 

私が生まれついて初めてしたことが

本能のまま泣き叫ぶことではなく

安心して眠り続けることでもなく

訳もわからず痛みと哀しみに耐えることだった

 

 

誕生から1年以上の間

私は病院のベッドの上で育った

 

 

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虚偽と虚勢にまみれた孤独人間

水も飲めない不良品

傷だらけの醜い姿

 

天使などとは程遠く

自然淘汰されるはずの命だったのに

 

生き残ってしまった

 

私は私の体を受け容れられないまま

42年間生きてきた

 

不良品であることを美談にして

醜い姿を嘘で塗り固めた壁で隠して

 

 

そして私は孤独人間になった

 

 

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